学会長挨拶
このたび、令和8年2月3日(火) 大阪市において日本昆虫資源利用学会を設立する運びとなりました。
ここに至るまで、多くの研究者、関係者の皆様から温かいご理解とご支援を賜りましたことに、心より御礼申し上げます。
学術界において、これまで昆虫を「資源」として総合的に捉え、利用する研究は必ずしも十分に行われてきたとは言えません。2013年に国連食糧農業機関(FAO)が発表した Edible Insects レポートを契機に、昆虫を飼料・食料・肥料・燃料等として産業利用する可能性が世界的に注目されるようになりましたが、我が国においては、従来の昆虫学分野が分類、生態、進化、害虫防除研究を中心として発展してきたこともあり、ヒト社会に資する「益虫」としての科学的知見や体系的研究は依然として乏しい状況にあります。
また、応用動物昆虫学、畜産学、水産学、土壌肥料学、環境工学、エネルギー学など、昆虫利用が想定される関連学会において、分科会や小集会で取り上げられることはありますが、学会横断的な連携や、利用に関する安全基準・評価方法の統一は十分に進んでいません。その結果、科学的根拠に基づく統合的安全性評価や、ヒト・動物・昆虫・環境の健康を一体として捉える「ワンヘルス」の視点に立った持続可能性の検証が未だ不足しているのが現状です。
この背景には、昆虫資源利用が既存学問分野の「狭間」に位置し、学問としての位置づけが曖昧であるという課題があります。そのため、大学における専門教育や教科書の整備が進まず、食料・飼料・肥料・燃料・ヘルスケア・廃棄物処理といった分野を横断する統一的な学術概念や用語体系が確立されてこなかったことが、昆虫とヒト社会の共生に対する正しい理解と普及の妨げとなってきました。
こうした課題を解決すべく、昆虫を資源として活用しようと志を同じくする研究者が1年余りにわたり議論を重ね、
① 昆虫生産システムの社会インフラとしての可能性の研究
② 下水処理場や畜産施設など既存インフラへの昆虫利用統合モデルの開発
③ 昆虫資源利用がもたらす多面的機能の統合評価手法の確立
④ 昆虫生産を国の食料・環境政策に位置づけるための政策提言
を趣旨として、本学会の設立に至りました。
本学会は、「昆虫」を共通のキーワードとして、既存学会のニッチ領域を統合的にカバーする、これまでにない学際的学問領域を目指します。加えて、人と昆虫との関わりの歴史に関する学術研究を充実させ、関連学会や団体と連携を保ちながら、多岐にわたる活動を展開していきます。産学官の多様な会員が連帯感をもって参画し、社会から信頼される安全性検証の基盤研究はもとより、共同研究から社会実装、人材育成に至るまで、昆虫資源利用に関わるあらゆる課題に取り組む「共創の場」となることを願っております。
本学会の活動が、持続可能な社会の構築と、ヒトと昆虫の新たな共生関係の確立に貢献することを祈念するとともに、皆様の積極的なご参加とご支援を心よりお願い申し上げます。
令和8年2月3日
日本昆虫資源利用学会
学会長 松本 由樹
【組織】
会長 松本由樹
副会長 眞鍋 昇
常務幹事:藤谷泰裕(兼 事務局長)
幹 事:井内良仁・生田和正・岡田輝喜・三浦 猛
監 事:田中宏一・由良 敬
学会事務所:〒648-0092 和歌山県橋本市紀見ヶ丘3丁目3-12